胃がんと診断されたら

1)胃がんが見つかったらどうすればいいの?

胃がんの見つかり方は大きく分けて二つあります。症状はないけれど、検診でうけたバリウム検査や胃カメラの検査で胃がんの指摘がある場合と、胃痛や胃もたれなどの症状があり、検査を受けた結果で胃がんと診断される場合があります。いずれの場合も専門施設での治療が必要となりますので、速やかに専門の医療機関を受診するようにしてください。症状の有無と進行度は必ずしも一致するとは限りません。早期がんでも胃痛などの症状を訴える方がいる一方で、進行がんでも症状がほとんどない方もいらっしゃいます。治療を受ける際に、JCOG胃がんグループの関連施設をご希望の方は、『参加施設』の項目を参考にして下さい。


2)治療方針はどんな検査を受けて、どのように決まるの?

治療方針を立てるには、まず、ステージ(1~4まであります)を決めるための検査を受ける必要があります。ステージは以下の要素を組み合わせて決定します。

1)がんの深さ(深達度)

2)胃の周囲に存在するリンパ節への転移の有無(リンパ節転移)

3)胃から離れた肝臓や肺など遠隔臓器への転移(遠隔転移)

4)腹腔内へのがんの散らばり(腹膜播種:ふくまくはしゅ)

これらの組み合わせによってステージ1~4のどこに分類されるかが診断されます。胃がんの局所的な情報は胃カメラやバリウムの検査によって診断します。胃の外側の情報、つまりリンパ節転移や他の臓器への転移は、主にはCT検査を行い診断を行うことで、術前のステージが決定されます。胃がんの深さが浅く、リンパ節転移の可能性がほとんど無いと考えられる場合は、内視鏡(胃カメラ)を用いた『内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic submucosal dissection)』での治療を試みることが可能となります。一方で、最初の診断で胃カメラでの治療が適応外となるようながんの深さがある場合や、CT検査において既に胃の周りのリンパ節に転移が存在するような場合は、外科的な胃切除が適応となります。胃を切除する範囲は、主に胃がんができた位置と深さによって決定されます。


3)ステージ1~3の場合

術前にがんが胃だけに限局している場合や、リンパ節への転移が胃の周囲までにとどまっていると診断された場合は、ステージ1~3の間に分類され、手術±抗がん剤で治療を目指します。胃切除を受けた後は、採れた胃とリンパ節を顕微鏡で詳しく観察して、それぞれのがんの広がりを確認した上で、最終的なステージが決定されます。術前につけたステージ診断は画像検査で行っているのに対し、術後のステージ診断は顕微鏡検査から得られる情報を基に最終決定されますので、術前診断と術後診断ではステージが異なる場合があります。最終診断でステージ2以上の場合、術後再発の割合を減じる目的で、抗がん剤治療を行うことが推奨されています(年齢や基礎疾患によって推奨されない場合もあります)。


4)ステージ4の場合

肺や肝臓など胃から離れた臓器への転移(遠隔転移)やお腹の中に既にがんが散らばっている状態(腹膜播種)がある場合はステージ4に分類されます。この場合は手術治療の適応はなく、がんの進行を抑える目的で、全身的な抗がん剤治療を行います。頻度は限られますが、抗がん剤が著効し、局所治療としての胃切除や転移巣切除を行うことで(コンバージョン手術といいます)治癒を目指せることがあります。一方で、腫瘍からの出血で貧血の進行が早い場合や通過障害を伴う場合には、症状を緩和する目的で胃切除(姑息的胃切除)を行ったり、食事の通り道を確保するためのバイパス手術を行う場合があります。


5)標準治療は良い治療なの?

主治医からの説明で『標準治療は○○です』と話しを聞いた場合に、患者さんの中には効果に疑問を持たれる方がいらっしゃいますが、標準治療は過去の臨床試験の結果などを元に考えられた、科学的根拠の示された現存する最良の治療と位置づけられています。この標準治療をベースとして、患者さんごとに年齢や基礎疾患といった、個別のリスクを考慮した上で適切な治療方法を決定していきます。更には、現在進行開発中の臨床試験と呼ばれる治療が存在しますが、詳細は下記の『6)臨床試験の位置づけは?』の項目をご覧ください。

6)臨床試験の位置づけは?

日常診療において、私たちは、これまでに得られた科学的証拠(エビデンスと言います)に基づく、現時点での最良の医療(標準治療)を提供しております。しかしながら、現在の最良の医療をもってしても、十分に満足できる結果が得られているわけではありません。今後、さらにより良い優れた治療を開発していくことが必要不可欠です。そこで、我々は、現在の標準治療よりも優れている可能性があると期待される様々な新しい治療/高度な医療を考案し、その有効性や副作用などを臨床試験において検討しています。ただし、臨床試験の結果が出るまでは、これらの新しい治療/高度な医療が、現在の標準治療より優れているかどうかは分かりません。

臨床試験において新しい治療(試験的治療)を行う場合には、多くの専門家が知恵を出し合い議論を重ね、その期待される効果と予測される副作用のバランスが最適になるであろうと考えられる治療のやり方、観察のやり方、さらには科学的に正しい評価のやり方を記載した「臨床試験の計画書(プロトコール)」が作成されます。その後、院内の倫理委員会などの外部の者によって、科学的に妥当であるか、期待される効果と予測される副作用のバランスが適切か、患者さんの安全性が十分に確保されるよう配慮されているか、患者さんに十分な情報が提供されているかなどについて慎重に検討され、それぞれの施設の責任者(病院長など)により臨床試験の実施が承認されます。

また、臨床試験の実施中には多くの専門家によって、臨床試験が計画書に沿って適切に行われているか、予想以上に副作用などが起こっていないかなどが定期的にチェックされます。さらには、外部の医師や専門家が、第三者的にチェックすることもあります。このように、臨床試験における医療は、日常診療よりも透明性の高い、高度な医療であるともいえます。

このようなプロセスに則って行われるのが「臨床試験」です。

JCOG胃がんグループの関連施設では、これまでも様々な臨床試験を行い、それらの結果は現在の標準治療となっています。現在も、さらなる進歩を求めて、有望な治療(試験治療)を検討するための多くの臨床試験を行っております。これらの臨床試験は、がん診療の進歩につながるとことは間違いありませんが、患者さんのご協力なくしては成り立ちません。参加を希望される方、または、ご興味をもたれる臨床試験がある方は、JCOG胃がんグループの関連施設の担当者にお尋ねください。

ご理解とご協力をよろしくお願い致します。                       

現在JCOG胃がんグループで行われている臨床試験に関しては『自分に合った臨床試験』の項をご覧下さい。


JCOG 胃がんグループ
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